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アンナ・カレーニナ4


5月から読みはじめること約2ヶ月。
いよいよ完結しました。長かったー


読み返すまですっかり忘れていましたが、アンナが自死を思い描くようになったように、リョーヴィンもまったく立場も状況も違いながら同様に希死念慮があったこと。
人が自らに死を思うことは、どんな状況下で起きるかわかりません。
一見まったく縁のないように思える人にでも起こりうるものです。


でも、このふたりに関していうとなにが決定的に違っていたか。


それは、アンナがその思いに取り憑かれていた、その考えが生活の中心になっていたのに対し、リョーヴィンはそんな思いを抱えながらも日々の生活を周囲の人々とのやりとりを黙々と忠実にこなしていたことではないでしょうか。


日々の仕事をひたすらにこなす。毎日を生活しつづけることを続ける。


一見当たり前で「なんだ、そんなことか」と思えることがいかに大切か。
そのなかで家族や周囲の人々との結びつきが、その人の支えとして重要であるか。
うつ病の人は、それができなくなるから大変なのです。


リョーヴィンはやっぱりこれからも何度も悩み続け、いかに生きるべきか考えつづけるし、迷いつづけるのだろうと思います。
彼ってそういう人種です。
世の中にはそうならなくていい人もいるけれど、そうならざるを得ない人もいる。


でも、キティや息子、これから増えるかもしれない家族、周囲の人々に囲まれながら、毎日忙しく益にならないように思えることもたくさんこなしながら、毎日を過ごしていくのでしょう。
でも、生きていける。生きるとはそういうことだから。



リョーヴィンはアンナの生きられなかった反面なのかもしれません。
もちろん男と女、立場の違いもあるから完全とはいえず、ふたりが邂逅したときには完全にアンナの手中にはまったリョーヴィンくんでしたが(笑)。


ちなみに映画の最後が、リョーヴィンではなくカレーニン親子で締めくくられたのは、なんだか感慨深いですね。
わたしはなぜかあのラストがものすごく気に入りました。





アンナ・カレーニナ〈4〉 (光文社古典新訳文庫)

レフ・ニコラエヴィチ トルストイ / 光文社



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映画アンナ・カレーニナ
by minori_sb | 2013-07-13 18:51 |

アンナ・カレーニナ3


いよいよ第3巻です。
リョーヴィンとキティの結婚、新婚生活、カレーニン氏とリディヤ・イワーノヴナ夫人の新たな関係、そしてアンナとヴロンスキーに取りに広がる確執、主婦ドリーの幻想と現実と、さまざまな人の想いが物語を盛り上げています。


個人的に、後半のドリーがアンナを訪問するくだりが好きです。
彼女らしさがよく表されています。

物語のなかで、ドリーは現実に根ざしながら、そうじゃない生活(例えばアンナのような)への羨望も持ちえ、それでもなお地に足をつけて生きていこうとする人の典型として描かれています。
苦しみもあるけれど、喜びもある。
葛藤を抱えながら生きる。

ドリーの生き方って物語としては地味だけれど、生きる上での幸福ってこんなところにあるように思います。
おばあさんになって、死ぬ間際、多くの家族に囲まれて、大変だったけれどそう悪くもなかったなあと思えるような人生。
アンナが選ばなかった道を選んだ人。
華々しさはなくても、とても素敵だと思います。


さて、今回はふたりのアレクセイについて取り上げます。

夫と愛人が同じ名前を持っているというのは、とても変な感じ。
しかし、そこに物語の意図が潜んでいるような気がします。

アレクセイは、コインの表裏、光と影、(アンナにとっての)現実と理想(うまく言い表せていない気がするのですが、とりあえず理想と書きます)を表しているよう。
アンナにとって生きられなかった半生がヴロンスキ―にあるのなら、ヴロンスキ―はカレーニンという夫(現実)に対して理想である。
どちらが表か裏か、光か影かは、お互いの視点によって変わるので一概には言えませんが。

でも、ここの第3の属性。子どもが入るから話がややこしくなる。
アンナには現実(カレーニン)は嫌だけど、セリョージャは愛している。
そして、理想(ヴロンスキ―)との子どものアニーにはあんまり愛情を感じていない。

本来なら、愛する人との子どもなんだからそっちのほうがより可愛いんじゃないの? となるところなのですが、しかもアンナはドリーにきっぱりともう子どもはつくらないと宣言している。
アンナにはセリョージャこそが息子なんです。
でも現実(カレーニン)は否定している。理想(ヴロンスキ―)に生きようとしている。でも息子(カレーニン属性)は断ち切れない。

そもそも子どもという存在が、理想世界ではないんですよね。
子どもは一個の人間です。いやでも現実を帯びてくる。
だから、世間と隔絶して、ヴロンスキ―との世界に生きようとするとき、子ども(アニーやセリョージャ)っていう現実はアンナに自己矛盾を引き起こすのだろうと思います。

しかもヴロンスキ―は男性として当然と思うのですが、将来設計をドリーに打ち明けています。
自分のものを子どもに残していきたいと。
それはアニーだけじゃなくて将来生まれる自分の子ども(きっと男の子)を想定しています。
さあ大変。理想世界の人も現実を帯びてきました。

アンナがカレーニンをあれほど嫌悪し、3巻ではヴロンスキ―に嫌われまいと涙ぐましい努力をしている。
そこにほんとうに愛はあるのだろうかと疑いたくなっちゃうアンナの必死に保とうとする自らの世界。

アンナが相手にしているのは、アレクセイというものではないか、と思うのです。
つまり、ヴロンスキ―が彼女の運命の相手だったのではなく、カレーニンとの結婚が間違っていたのではなく、アレクセイという男性的対象が光と影の側面としてふたりの人間に分裂しているのかなあと。

うまく生きる人は、現実を保持しながらなんとか影の世界も体験して統合させていくのかもしれません。
でも、アンナはそれができなかった。

ドリーのくだりと対比させても、アンナとドリーも対だなあと思います。
理想に憧れつつも現実を生きようとするドリー。
現実を否定しながらも息子への想いを断ち切れない理想に生きようとするアンナ。


アンナとリョーヴィンも対になっていると前回書きましたが、こうしてみるとアンナ・カレーニナは実に複雑に対立構造が重層化しているように感じられます。



 *






アンナ・カレーニナも残すところあと1巻。
実はもう読み終わっているので、お菓子をつくりながら、最後の感想をまとめたいと思います。



アンナ・カレーニナ〈4〉 (光文社古典新訳文庫)

レフ・ニコラエヴィチ トルストイ / 光文社





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アンナ・カレーニナ2
by minori_sb | 2013-07-06 22:17 |

アンナ・カレーニナ2

盛り上がりを見せる第2巻です。

映画を見ているので、あ、これはあのシーンに使われているところだな、とか映画のシーンを改めて思い出したりして楽しみが増しています。

映画のリョーヴィンがキティに求婚するシーンがとても静謐でありながらドラマチックで好きだったのですが、小説では2巻に登場します。
小道具は変わりながらも小説の場面をうまく再現されていて見事だなあと思いました。


今回は、ひとりの登場人物をピックアップして語ることにします。

今回選んだのは、アンナのお兄さんのオブロンスキー氏。


アンナ・カレーニナはこの人の浮気話から始まるので、なかなか印象深い人物です。
小説にはさまざまな人物が登場しますが、どれも生き生きとして人間味があります。
オブロンスキ―氏もそのひとり。

2巻でつくづく思ったのは、ああこういう人がそばにひとりくらいいると、人生はもっと彩りが増すかもしれない、ということでした。
たくさんいては困ります。でもひとりくらいいると楽しい。

あの鋼鉄のカレーニン氏すら柔らかく包み込んでしまう人柄、周りの人々との調和を重んじ、常に周りの人が楽しめるようにと便宜をはかる姿は、ひとつの才能です。
オブロンスキ―氏の陽気さが、読んでいるこちらまで伝染してくるようです。
リョーヴィンはオブロンスキ―とは正反対の性格ですが、なかなかこのふたりに友情が続いているのは、正反対だからこそ、なのかもしれません。


もちろん人間どこまでも完璧というわけにはいきませんから、自分に正直であり続けるオブロンスキ―氏は相変わらず浮気を続けているわけですけれど。
でも、このひと根っこはやはり奥さんを愛していて、決して別れる気はないんだろうなあとつくづく思います。
帰れる家があるからこそ成り立つ浮気。
だからといって、ドリーの立場からすれば、決して面白くはないでしょうが。
ある意味では少年のようですね。


アンナの決定的なちがいは、彼女の場合家庭が最終的な帰結点になっていないこと。
あとがきにも書かれていますが、当時の女性の地位はいまと比べ物にならないほど低く、離婚の定義もだいぶちがいます。
そのなかで、あくまでひたむきに「自分らしさ」を追求しようとするアンナ。
彼女の目指すところは、当時のロシアからも、また彼女の恋人からも、遠い場所であったのかもしれません。

そして、この小説で感じる面白さの二面性。
アンナとまったく違うキャラクターであるリョーヴィンも、実は、アンナと目指すところは同じであるようにミノリは思います。
まったく異なるふたりが、それぞれに異なる方法で同じ場所を目指している。
ゆえに、アンナ・カレーニナは、表題のアンナだけではなく、リョーヴィンの物語がテープの裏面のように連綿と描かれているのではないでしょうか。





アンナ・カレーニナ〈2〉 (光文社古典新訳文庫)

レフ・ニコラエヴィチ トルストイ / 光文社







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次回はアンナ・カレーニナをちょっとお休みして別の本になります。

by minori_sb | 2013-05-26 16:55 |

アンナ・カレーニナ1

映画「アンナ・カレーニナ」も見たので、久しぶりに原作を読み返してみることにしました。
読むのは2回目になります。

とにかくこの小説、ものすごく分厚いのですが読みやすい!
わたしは光文社古典新訳文庫の望月哲男さんの翻訳でしか読んだことがないので比較ができないのですが、少なくとも望月哲男さんの訳はとても読みやすいです。
量は半端なく多いのでやっぱり時間はかかりますが、スイスイと読み進められます。
ロシア文学、トルストイと尻込みせずに読んでもらいたいお薦めの本です。

1回目に読んだときと、やっぱり印象とか読んだ感触は変わりますね。
特に今回感じたのは2点です。

1点目は、これはもう映画の影響力が120%なのですが、カレーニン氏に対する評価がガラリと変わったことです。
初読のときは、ミノリはアンナもそんなに好きではなかったのですがカレーニン氏にもまったく同情していませんでした。
つまらない家庭を顧みない仕事人間、という印象です。

しかし、今回映画のカレーニン氏がミノリ的にはとっても好印象だったので(ラストの椅子に座っているところでもう胸キュン!になってしまいました)、全体的に前回より親和的に捉えることになりました。
いやあ、映画の影響力って馬鹿にならない!(笑)

たしかにこのカレーニン氏、仕事一辺倒であんまり家庭や奥さんに目を向けられていないところもありますが、でもじゃあ奥さんや息子を放ったらかしかといえばそうでもなく、アンナがモスクワから帰ってきたときは仕事の合間をぬって駅まで迎えに行っているし、奥さんがいないとやっぱり寂しいなあと自分の気持ちも言っているし、オブロンスキ―氏みたいに浮気をするでなし、やや家庭に感情を向けられていない、思考への偏りが強く感情が鈍い節はありますが、アンナがこき下ろすほどひどい旦那さんかといえばそうでもないんじゃない、と思ってしまいました。
アンナとヴロンスキ―の関係が明るみに出てからの逃げの姿勢は彼にとって試練から逃げているみたいなもんですが、ある意味それは彼にとってこれまでの生き方の改変を求められているのであり、逆に頑張れと応援したくなってきました。

つくづく思うのは、アンナがモスクワに行き、ヴロンスキ―と運命的な出会いを果たすまで、このカレーニン一家は特に問題のない家庭だったのですね。
いや、むしろ当時のロシアの貴族社会ではかなりうまくいっているほうの家庭だったのではないでしょうか。
でも、ドリーがいうように、「何か嘘くさいものがあった」のでしょうね。
どこかうわべだけのところがあったのかもしれません。
アンナもカレーニン氏も気づいていないところで。
それが、アンナのヴロンスキ―との出会いで劇的にかき混ぜられ深いところまでえぐられていく。
一度深い闇の底を覗いてしまったら、もとのうわべだけの世界では生きていけない。
そこからどんなふうに生きていくかは、人それぞれ違うのでしょうけれど。

2点目は、アンナへの印象がすこし、前回よりは彼女に寄り添うことができたことです。
前回は、まだいまよりはミノリもすこーし若かったので、アンナの心情がどうしても理解できませんでした。
でも今回改めて読んでみて、言葉ではうまく説明できない気持ちが、そうせざるを得なくなってしまった展開を受け入れることができました。

たしかにアンナは魅力的な女性です。
好きかといわれれば、同性としては首を捻ってしまいそうですが。
ボヴァリー夫人のエンマにも通じるところがあるのかなあ。
アンナのほうが、より高尚な感じはしますけど。

まだ1巻目。
苦難はこれからですね。


 


今回紹介した本はこちら。

アンナ・カレーニナ〈1〉 (光文社古典新訳文庫)

レフ・ニコラエヴィチ トルストイ / 光文社



ちょっとボヴァリー夫人についても触れたので。

ボヴァリー夫人 (新潮文庫)

フローベール / 新潮社





by minori_sb | 2013-05-17 18:54 |


手作りお菓子と本の感想、日々のできごとについて


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