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出会ってしまった人 --バッテリーⅥ

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のんびりと最終巻までこぎつけました。
さっき過去ログを探していたら、なんと3巻から5巻まで感想を書いていなかったらしい。
いきなり最終巻の感想です。
原作も10年近くかかって刊行されていたんですね。 

きっと年代を違えて読んだら、感想は異なっただろうなと思います。
もし十代の、巧くんたちと同じ年代で読んだら、ただただ原田巧という人の凄さと格好よさに圧倒されたかもしれません。
巧くんは、とても格好いいです。
ひたむきに努力することを当たり前だと思っているところも、野球をやるために生まれてきたかのような才能も、不器用で言葉が足りないところも、たまに枠を外れてふざけて周りから驚かれるところも。 


でも、この作品のなかで気になったのは、豪くんや瑞垣くんですね。
このふたり立ち位置がそれぞれに“自分のすぐそばにものすごい天才がいて才能の差を嫌でも感じる”ポジションです。

この“すぐそばに”がポイント。
ちょっと距離感があると「あいつはすげえよなあ」で終わるのに、なまじ距離感が近い分、嫌でもいろんな思いを味わってしまう。

しかも、当人(巧や秀吾)は優越感なんか全くなくむしろ人間的には頼ってくる。
そりゃあ瑞垣くんみたいに中3にして人生悟って冷やかしたくもなりますよ。
本気でやればやるほど自分の劣等感をますます刺激されるわけですから。 


それでもこの作品のすごいところは、そこで最後の試合のそのためだけに、いかにみんなを本気にさせるかに、集約させていったところだと思います。
非公式の、卒業したメンバーも含めた練習試合。ただその一試合、一瞬のためにいろんな人が思いをそこへ投入していった。
「いま、ここ」がすべて。 

豪くんは序盤のあの屈託ないお人好しそうなところから、変わったなあと思います。

「こいつと出会ったことが良かったのか悪かったのか、囚われてしまったことが幸運なのか不運なのか、答えを出すことなど無意味なのだ。今はただ、ともに生きる。それで充分だ」(バッテリーⅥ P290) 


出会わなければ良かったのだろうか、とifを考えても答えは出ない。
出会ってしまった。
しかも、もう別れのときまで想定している。

出会ってしまったから、漠然とした未来から明確な自分の限界を感じてしまった。
これは辛い現実です。
それでも、とにかくこの一瞬だけは全力を注ごうと決めて挑んでいる。 
最後の一瞬まで、気が抜けず読み進めてしまいました。


ちなみに、個人的には吉貞くんが好きでした。ちゃんと自分の能力も知りながら、基本お調子者だけど、でも思いのほか冷静に周りを見ている。いやあ、彼は大物です。意外とこういうタイプが大成するのかもしれない。



▽1巻と2巻の感想

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by minori_sb | 2017-06-24 07:30 |

アッコちゃんが教えてくれたこと --幹事のアッコちゃん

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アッコちゃんシリーズ第3弾。
アッコちゃんの集大成ともいうべき1冊でした。



アッコちゃんは、基本的に三智子などの第三者の視点から描かれています。
アッコちゃんというパワフルな人を通して、変容していく過程。
アッコさんはある意味触媒みたいな人で、アッコさん自身についてはあまり触れられていませんでした。
なので、スーパーウーマン・アッコちゃんというイメージが強かった。

確かにアッコさんはパワフルでエネルギッシュなスーパーウーマンですが、裏を返すと向こう見ずで行き当たりばったりな人です。
アッコさんのポジティヴな面だけでなくネガティヴな面も取り上げた『アンチ・アッコちゃん』はこれまでにない面白い視点でした。
(まあ、温子さんはアッコさんが実は好きでたまらないんでしょうけど・笑)


もちろんアッコさんはとってもすごい人なんだけど、でも万能じゃないんですよね。
なんにでも全力で真剣に取り組むのは良いことだけれど、誰でもアッコさんみたいにすれば良いってものじゃない。
それはもう、温子さんが見事に証明してくれています。


三智子が成長したのは、アッコさんを目指したからではない。
アッコさんを通して、三智子が自分なりの持ち味を自分で活かせるようになってきたから。

豊かさや幸せ、才能、持ち味って、その人の数だけある。
自分にとってそれはなにか、それを知って、そこをうんと伸ばしていく。


アッコちゃんが教えてくれたことです。







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by minori_sb | 2017-02-04 19:00 |

梅田駅アンダーワールド --3時のアッコちゃん

3時のアッコちゃん

柚木 麻子/双葉社

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アッコちゃんシリーズ第2弾。
実は、この「3時のアッコちゃん」を最初に読みました。


「天然生活」という雑誌に作者の柚木麻子さんが寄稿されていて、そこにこの本が取り上げられていました。
記事には「会議に英国式ティータイムを取り入れる」「ヴィクトリアケーキ」のキーワードがあって、俄然興味が湧いてきました。
高校生のころから英国式ティータイムに憧れを抱いていたわたしとしては、このキーワードに反応しないわけにはいきません。
作者の柚木麻子さんの本も、「本屋さんのダイアナ」以降何冊か読んでいていま気になる小説家さんのひとりです。
柚木さんの描かれる物語は、手の込んだものからジャンクなものまで、とにかく食べ物の描写がいつもおいしそう。


英国式ティータイム会議のお話も面白かったし、アッコさんのキャラはとても個性的。
働く(働こうとする)女性に焦点を当てたストーリーは、どれもそれぞれにうんうんと頷くところがありました。


しかしあえてどれかひとつを選ぶとしたら、それはもう第4話の「梅田駅アンダーワールド」しかないでしょう。
就活時代、受けては落とされ、受ける企業によって自分の価値観をそのたびにカスタマイズして、何度も面接で失敗して、自分は実際のところなにがやりたいんだろうと自問自答する日々。
わたしは、遠征はしたことがないのですが、佐江の心境ってとてもリアルです。


しかし、それはいいんです。(いいのか!?)

こんなに梅田駅がワンダーランドのように描写されていることが、なんというかもう感無量です。
阪急電車も地元民として愛着がありますが、阪急梅田駅をキングス・クロス駅に喩えるなんて考えたこともなかった。
梅田のあのごちゃごちゃした地下世界をこんなに面白おかしく、摩訶不思議に、そして愛情を持って描いてくれてありがとう。
そんな気持ちでいっぱいです。


ちなみにわたしは通学と通勤で梅田駅を利用するようになってから、ようやく、ようやくあの梅田のごちゃごちゃした地下世界がすこしわかるようになりました。
方向感覚はないので、地図じゃなくて『こっちにいけばあっちに繋がる』とかそういうふうに理解しています。
おかげでたまに飲み会でマップを使うと、わけがわからなくなります。
『現在地からJRへ行くにはどのルートが最短なんだろう』とか考えるのも大変です。
わたしにとってほんとうに巨大ラビリンスです。

阪神百貨店の前(佐江ちゃんがどっちに行ったらいいんだろうと、迷ったところ)のあたりは人が恐ろしく入り乱れていて、慣れないときは吐きそうになりました。
地元民でも普段から利用していないとわけがわかりません。動く歩道は止まりません。歩くんです。(物語には関係ないけど、わかる人にはわかるだろう)とか、語りだすと止まらなくなるあたり、やっぱりわたしも地元が好きなのだなあと思いました。
これを読んで梅田へ行くと、とっても面白いと思います。(独断と偏見で)おすすめです!(笑)




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by minori_sb | 2017-01-28 07:50 |

食べることは生きること --ランチのアッコちゃん

今回から3回に渡って、柚木麻子さんのアッコちゃんシリーズを取り上げたいと思います。


アッコちゃんシリーズは、1作目の「ランチのアッコちゃん」からはじまり、2作目の「3時のアッコちゃん」、そして3作目が「幹事のアッコちゃん」です。
今回は1作目の「ランチのアッコちゃん」。


裏の見出しに“ビタミン小説”と書いてあるけれど、まさしくこれは“ビタミン小説”です。
読むほどにかたくなっていたこころが解きほぐれていきます。


アッコさんのキャラクターの強さもさることながら、おいしそうなごはんの描写、それを食べる人たちの息づかい。
ほんのすこしなにかが加わっただけで、こんなにも世界は彩りを増すのだと伝わってきます。


ある看護師さんの言葉。一人で食事をするより、誰かと一緒に食べた方が長生きする。

「誰かと一緒に食事する時って、品数が増えることが多いし、温かい汁物も一緒にとるようになるじゃない。だから、消化が良くなるの。時間をかけてゆっくり食べるようになるでしょう。自然とよく噛むようになるから食べ過ぎなくて済む。いいこと尽くめよ」(第二部 夜食のアッコちゃん)


誰かと一緒に食事するからといって、これが満たされるとは限りません。
でも、できることなら、こういういいこと尽くめの食事を、できるだけたくさんとれるようになりたいですね。

ちなみにひとりでも(わたしはひとりで外食するのも好きです)、こういう心持ちで食事できたらいいなと思います。
ただ胃に詰め込むのではなく、目の前に誰もいなくても、目の前の食事を味わう。
作ってくれた人(料理や食材、いきものたち)に感謝する。



食べることは生きること、はわたしのなかでもテーマなのですが、柚木麻子さんはほんとうにこのテーマを扱うとうまいなあと思います。




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by minori_sb | 2017-01-25 07:29 |

ムスビ、多義性 --小説 君の名は。


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わたしが映画を観たのは9月。
当時から話題になっていましたが、こんなにヒットするとは思っていませんでした。
わたしの周りでも、話題性につられて観にいった人が何人かいます。 



監督の書いた小説ということで、気になって読んでみることにしました。 


ひと言で言うと、これは「君の名は。」というエンターテイメントのひとつです。
映画も、RADWIMPSさんの音楽も、小説も、全部ひっくるめて「君の名は。」を構成している。
小説は映画をそのまま文章化した要素がはじめは強いけれど、途中から新海さんの色が出てくる。
そこにはRADWIMPSの音楽の要素も盛り込まれていて、きっといろんな色が溶け合って、映像のなかでは見せられない言葉だからこそ描ける描写を織り込んでいる。


読んでいると、映画のシーンを思い浮かべるし、音楽も聞こえてくるようだし、きっと小説を読み終わってから映画を観たら、以前観たときと違った心情で観ることになるだろう。
新たな発見をすると思う。 



映画の時には“境界”を強く意識したのですが、小説を読んで今度は“ムスビ”という言葉が引っかかってきました。
ああ、これはムスビの物語でもあるのだ。

一葉おばあちゃんが、瀧くん三葉と四葉ちゃんに話してあげるところです。

「糸を繋げることもムスビ、人を繋げることもムスビ、時間が流れることもムスビ、ぜんぶ、同じ言葉を使う。それは神さまの呼び名であり、神さまの力や。ワシらの作る組紐も、神さまの技、時間の流れそのものを顕しとる」
「よりあつまって形を作り、捻れて絡まって、時には戻って、途切れ、またつながり。それが組紐。それが時間。それが、ムスビ」
(小説 君の名は。 P88)



瀧くんと三葉ちゃんはムスビのなかで出会った。
そして、後半に瀧くんが行ったことは、ムスビの絡まりを解き、また繋げ直すことだった。
そしておそらくそれができたのは、ムスビの神さまにいちばん近いところ(境界)に場所と時間、三葉という存在、すべての条件が揃ったから。



映画を観たときよりも、一歩違った視点が見えてきて、おお! と思いました。新たな発見です。 
名前というのも面白いですよね。名前は、言霊です。
名前はそれだけで強い力がある。
ハリー・ポッターで、名前を呼ぶだけでも恐ろしいといったように、名前を知るということは、その人を知ること、その人の魂に触れることです。



改めて、なぜ「君の名は。」が社会現象になるくらいヒットしたのか考えてみました。

きっといろいろあると思います。
写真のように、それ以上に綺麗な背景。突拍子もない設定。映画を彩る音楽。
マスコミで取り上げられていることって主にこの3点だと思います。


しかし、わたしが思うこの作品の魅力って、解釈の多義性だと思います。

例えば上記3点もそうだけれど、いろいろなところに人を魅了する要素が盛り込まれている。
話の内容そのものも掘り下げていくといろんなところに潜り込んでいけるし、音楽を楽しんでもいい、美しい背景に魅了されても良い。
つまり幅が広いのです。
宮崎駿さんの「千と千尋の神隠し」にも通じるところがあると思う。千と千尋も多義性のある作品です。
だからこそ世界中で受け入れられたのだと思う。


イメージの奥深さ。
こんこんと突き詰めていくと共通項のような普遍性が浮かび上がってくるけれど、その前にあるのは多義性です。



▽映画の感想はこちらです。






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by minori_sb | 2017-01-07 07:35 |

野球を通して描かれること -- バッテリー/バッテリーⅡ


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前から名前は聞いたことがあったのですが、巻数も多いし、野球少年にはそんなに興味がないし、と積極的に読もうと思わなかった本です。
最近知人の中学生の娘さんがこの本がとても面白いと話していたそうで、なんとなくじゃあ一度読んでみようかと思い立ちました。


とりあえず1巻、2巻と読みました。
うわあ、面白いです。
野球は(というかあえて野球というわけではなくスポーツ全般的になのですが)、特に興味がないのですけれど、これは面白い。


そういえば漫画の話なのですが、羽海野チカさんの「3月のライオン」という漫画も、特に将棋が好きというわけでもないのに面白くて読みつづけています。
つまり、わたしの場合は野球や将棋など、そこで扱われている題材そのものではなくて、そういった題材を扱いながらその背景にある、登場人物たちのこころの動き、人間模様に興味があるのですね。
そういう意味では、オールジャンルOKです。
どんなものにも、人のこころの動きは付きものですから。




バッテリーは、巧くんという天才的なピッチャーと、豪くんという天才に出会ったが故に運命が大きく変わったキャッチャーがメインのお話です。
タイトルがバッテリーだからこのふたりが物語の主軸ですが、中学生という微妙な年齢のなかでのいろいろな葛藤や強がりや弱さが、なんともいえず絶妙に描かれています。
特に主人公の巧くんは、野球に関しては抜きん出ているけれど、それ以外はほんとうに不器用で、お母さんの苦労もわかります。
それをわかってたまるかという巧くんの気持ちも、うんうんと頷けます。


きっと読者のメインターゲットは10代の子だろうけれど、育児書よりもよっぽど思春期のむずかしい子どものこころを描いているのではないでしょうか。
だから大人こそ読んでほしいし、自分たちもそうだったなあと思えるところがきっとあります。 




2巻はまだ野球部として動き出せるか、というところ。
しばらく巧くんたちを追いかける日がつづきそうです。



1巻は文庫で読んだのですが、2巻はつばさ文庫で読みました。(写真の2巻はつばさ)
図書館から借りてくるまでわからなかった。



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by minori_sb | 2016-09-24 08:00 |

井戸へ潜っていくというメタファー -- ねじまき鳥クロニクル 第3部 鳥刺し男編 --


ねじまき鳥クロニクル〈第3部〉鳥刺し男編 (新潮文庫)

村上 春樹/新潮社

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 改めて全編読み通すと、この物語はまさしく「ねじまき鳥クロニクル」なんですね。
なにを当たり前のことをいまさら言うんだ、と怒られるかもしれません。
でもこの発見は、実は初読のときにはそこまで到達できなかったことです。
だからいまさらながらに、そこにあったことを気づかなかった宝物を発見したように、嬉しいのです。
クロニクル(年代記、編年史)なんだなと。 

 ねじまき鳥クロニクルという大きな潮流のなかに、主人公と久美子さんの物語があって、赤坂親子もその流れの一部で、綿谷昇や加納姉妹、本田さんや間宮さん、猫のサワラ、とひとつひとつは一見繋がりのないなかで、実は複雑に絡み合っている。
実質的には笠原メイちゃんくらいです、この流れに関わりのない登場人物って。(だからこそメイちゃんはすごい。メイちゃんのすごさについて語り出すと、それだけでここのページが埋まっちゃいそうです) 


 世界の終りや海辺のカフカ、1Q84などの春樹さんの長編に共通するところですが、内面にひたすらに向き合っていくことがあると思います。ねじまき鳥クロニクルでは、主人公が奥さんである久美子さんを失って、そのことに気づいて、取り戻すために、内へ内へと向かっていきます。現実世界で考えれば、彼がしたことは失業を続け、日々を生活し、井戸へ潜ったことくらいです。おそらくそれまで向き合ってこなかったからこそ、見過ごしてきたこともあっただろうし、久美子さんを取り戻すことがひいては自分自身に向き合い、変容していくことに繋がっていったのでしょうね。 


 それは同時にとても危険なことでもあります。変化はなにかを得ると同時になにかを失うことに繋がります。場合によってはとりかえしのつかないくらい。 


 それでも。変わっていくことへの大きな流れに身を投じるとき、それは現実世界のことだけに目を配ればいいというものではないことを、物語は示していると思います。どちらが先とはいえない。同時進行かもしれないし内的世界から起こるかもしれない。変わろうとするとき、内的世界と現実世界の両方でそのプロセスがある。井戸の壁をすり抜けることはなくても、それに近しいことは、おそらく誰にでも起こりうることです。 


 ただ内的世界に埋没するのは危険。
で、改めてなにが大切かと振り返ったときに、主人公が日々ごはんをつくってそうじをして、区民プールに行って泳ぐんですよね。この日常に手を抜かないこと、この生活の基本が実はとても大切なのだと思います。



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第二部の感想を書くのを忘れていました。またいつか機会があれば。




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by minori_sb | 2016-05-22 10:25 |

苦みがあるから人も人生も面白い —スロウハイツの神様・上 辻村深月—

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

辻村 深月/講談社

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ハケンアニメ!」を読んでいたら、無性にスロウハイツを読み返したくなっちゃいました。


はじめて読んだときは、それこそ夢中で読んだけれど。
環やチヨダ・コーキはほかの辻村さんの作品でもよく登場するので、改めて読み返すと懐かしさもひとしお。
そして、最後まで読まないとわからなかった伏線が、実はもうそこらかしこに散りばめられていて、視点が変わってさらに面白い。



スロウハイツを読んでいてつくづく感じるのは、純粋さだけでは成り立たないこと。
みんななにかしらの純粋さ以外のものを持っている。
それを闇と呼ぶか、苦みと呼ぶか、屈折と呼ぶかは人それぞれだけれど。

たぶんいちばん純粋なのはコーちゃんだけれど、彼は自分のなかのそういうものをすべて作品に注ぎ込める人なので、ある意味いちばん群を抜いている。


あえてここではそれに苦みと名付けるとしたら。
苦みがあるからこそ、人も人生も面白いのだと思います。



実は初読のときは読み進めるのに必死で、ストーリーのからくりについていけない部分がありました。
今回は最後までついていきます。では下巻へ!



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by minori_sb | 2016-02-03 07:00 |

「溺れそうな時にしがみつけるものを持つ人は幸せなはずだ」— ハケンアニメ!  辻村深月—


タイトルを見たときは、派遣アニメ? とハテナマークが浮かびました。
ハケンとは”覇権”のこと。


表紙を見たときに、ひょっとしてこの絵はCLAMP? と思ってしまったわたしは、実はひそかにアニメや漫画が好きな隠れオタクでした。(ちなみに表紙は正解でした。CLAMPでした)


どれくらい隠れかというと、ほとんど周囲にはカミングアウトせず、特に同じ喜びを分かち合うオタク仲間もおらず、イベントなども参加したこともなく、ひとり細々とそのとき好きな漫画やアニメを見ながらネットなどで二次創作的なことを楽しむという感じでした。
だからオタクではない人に比べるとオタクだけれど、バリバリのオタクさんに比べるとそこまで浸れず、どっちから見ても中途半端な感じ(なんかそういうものに程度をつけるのもどうかと思うんですが……)


最近はほとんど見なくなったし、だんだん遠ざかりつつあるけれど、わたしの生きる糧をくれた存在であったと思います。やっぱりあるとないとでは、あったほうが豊かになれたと思う。
ちなみにもうついでにカミングアウトしてごくごく最近の話をすると、「蒼穹のファフナー」というアニメが最後に見たアニメです。EXODUSはまだ最終話を大事に録画残しています。


物語のなかで、とても印象に残って思わず付箋を貼ってしまった言葉。

「現実を生き延びるには、結局、自分の心を強く保つしかないんだよ。リア充って、現実や恋愛が充実してる人間を揶揄して指す言葉があるけど、リアルが充実していなくたって、多くの人は、そう不幸じゃないはずでしょ? 恋人がいなくても、現実がつらくても、心の中に大事に思ってるものがあれば、それがアニメでも、アイドルでも、溺れそうな時にしがみつけるものを持つ人は幸せなはずだ」(P105)



辛くても、どうしようもないと思ったときでも、こころの拠り所になる存在があることはとても素晴らしいです。


辻村さんの小説ではおなじみのチヨダ・コーキも生で登場します。
黒木さんも登場して、なんだか久しぶりにスロウハイツが読み返したくなっちゃって、いま読んでいます。




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by minori_sb | 2016-01-27 07:00 |

ねじまき鳥クロニクル 第一部泥棒かささぎ編

ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)

村上 春樹/新潮社

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「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」で、河合隼雄先生がねじまき鳥についてコメントされている部分がありました。
細かいところは忘れたのですが(すみません…また調べておきます)、たしか河合先生は奥さんのことについて触れておられました。


ねじまき鳥を読むのは2回目か3回目です。
なにせ長い物語なので、なかなか腰を据えてよし、読もうと思わないと読めません。
海辺のカフカや、世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドはわりと何度も読み返しているけれど、ねじまき鳥はなぜかそんなに読む機会がありませんでした。(同様に、1Q84もまだ読み返す域になっていません。タイミング的なところもあるのです)


今回、「図書館戦争」の映画をきっかけに久しぶりに読み返してみて、わたしのなかの視点がすごく変わっていて新鮮な気持ちになりました。


ほんとうだ、これは久美子さんがキーパーソンだ。


マルタクレタ姉妹や、ナツメグやシナモンや、メイちゃんとか、ねじまき鳥にはとても個性的な登場人物がたくさん出てくるので、はじめて読んだときは正直久美子さんのことはそこまで意識していませんでした。
でも改めて読んでみると、これって主人公が奥さんを喪失していく過程、そしてそのことに気づく過程、取り戻す(修復していく)過程が描かれている。


久美子さんの声にならない声に主人公が気がつくのは第2部のそれこそ終盤なんだけれど(良いニュースは小さな声で語られる)、第一部で彼女はちゃんと救いを求めていたんですね。


でも、その声ってすごくわかりづらいそれこそメタファーで、でもそこに気がつくと物語の奥行きがぐんと深まってくる。



面白いなあと思いました。
なかなか本を読む時間をとることが難しくて第2部を読むのはこれからなんですが、わくわくしながら続きを読もうと思います。






これもまた読みたい。


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by minori_sb | 2016-01-09 15:56 |


手作りお菓子と本の感想、日々のできごとについて


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